実例
ソフトバンクグループの20年3月期決算発表がありました。
売上は前期比で微増だったものの、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの評価損1.8兆円を計上した結果、1.3兆円の営業損失となりました。
ファンドの投資先であるUber、WeWorkの公正価値が固有の理由で下がり、その他投資先も新型コロナの影響で公正価値が下がったのが原因です。
注目点
ファンドの会計は公正価値、つまり時価評価で計上されます。決算期ごとに投資先それぞれの将来キャッシュフローの現在価値を計算し、それを資産価値としますので、現在価値が下がればその分資産価値が下がり、それが費用として認識されます。それが今回1.8兆円の損でした。
ただし、将来の事業予測に基づく将来キャッシュフローはあくまで主観で作成されますので、資産価値の客観的正確さは保証されません。例えば去年度の決算では、新型コロナを想定せず将来キャッシュフローが見積もられたため、その時の現在価値(=資産価値)は将来予想を高く見積もっていました。つまりその当時のソフトバンクグループの株価は、実情より高く評価され過ぎていたとも言えます。そのため、その割高な前期の株価と、コロナを考慮した今期の株価の落差が、今期の大きな損失として現れました。